東海汽船「さるびあ丸」の船旅レポート – 利島旅行(1)
伊豆七島で一番小さな利島へ
一昨年から島登山にはまっていて、八丈島「八丈富士」、利尻島「利尻山」、伊豆大島「三原山」と続けて登っている。島の山の魅力は青い海を見下ろすように歩くところ。風も空気も内陸の山とは微妙に違って、何やらしっとりしている。
先週末、以前から気になっていた伊豆七島の小さな島・利島(としま)に出かけた。写真で遠景を見ると島全体がパラソル型で、見るからに島登山が楽しめそう。金曜夜、東京・竹芝埠頭を出て、土曜朝に利島到着。朝から山に登って島に一泊。翌日曜のお昼の船に乗って夜に帰京。二泊三日のスケジュールだ。
利島へは東京・竹芝埠頭から東海汽船が運行する神津島行きの船に乗る。伊豆七島のうち、伊豆大島→利島→新島→神津島の4つの島に順番に立ち寄っていく。
行きは東京を22時に出港し、翌朝7時40分に利島到着。9時間40分の船旅。帰りは利島を昼12時50分に出港し、東京には19時45分に到着(平日は19時着)。6時感55分の船旅。つまり旅程のかなりの時間を船の上で過ごした。まずは船旅の感想を。
大型客船「さるびあ丸」について
行き帰り共に、東海汽船の大型客船「さるびあ丸」に乗った。船のスペックは、総トン数:6,099トン、全長:118m、全幅:17m、航海速力:20ノット(時速約38km)。旅客定員は693人。さるびあ丸は、主に東京~大島〜利島〜新島〜式根島〜神津島航路と、夏に東京湾納涼船として就航している。
東海汽船はもう1隻「橘丸」という大型客船を持つ。こちらは主に東京~三宅島〜御蔵島〜八丈島航路で就航しているが、昨年、伊豆大島に旅行した際、帰りは橘丸だった。
ちなみに今年2023年1月に就航した大阪と別府を結ぶフェリー「さんふらわあ くれない」は、総トン数:9,245総トン、全長:153m、幅25.0m。航海速力22.5ノット(時速約42km)。旅客定員は710名。
自動車を積載しない分、大型フェリーに比べると、埠頭に留まったさるびあ丸のサイズは小ぶりに見えた。ただ、旅客が自由に動ける船内フロアは5階分(2階〜6階)あり、中はかなり広々としている。
運賃は客室のグレードにより3倍の開きが
客室は下から2等・特2等・1等・特1等・特等、5つのグレードがある。一般的な客船と同じく、上のフロアに行くほど上位グレードの客室となっている。2等には和室と椅子席、2つのタイプがある。私はさるびあ丸に3回乗って、いずれも2等和室を選んだ。
東京〜利島間の運賃は2等5,710円、特2等8,560円、1等11,410円、特1等13,700円、特等15,970円。最上位と最下位の間には3倍近い開きがある。
和室の場合、2等の定員は18人、1等の定員は12人。一部屋の定員の違いと1等には布団セットが付くほか、施設の違いはあまりない。帰りは2等椅子席に座ってみたかったが、前日予約しようとするとすでに満席だった。なお、キャンセルが出た場合は、船内で客室のグレードのチェンジが可能。
船内にはレストラン、シャワールーム、授乳室、喫煙室、自販機コーナー、冷蔵ロッカーが備えられている。自販機コーナーにはドリンク・軽食のほか、カップラーメンがあり、熱湯を入れて食べることができる。
外に出られるデッキは5階と6階、6階のさらに上には展望デッキがあり、かなり広い。海風を直接感じることができるのは船の旅ならでは。
船内の説明はこの程度にしておく。詳細は公式サイトを参照。
竹芝客船ターミナルを出航するまで
竹芝埠頭を出航するのが22時。21時前にJR浜松町駅に着き、徒歩で竹芝通りを750メートル、10分ほど歩いて客船ターミナルに向かった。竹芝通りには首都高速の上に架かる歩行者デッキもあるが、今回は下の歩道でアクセス。
21時15分に竹芝客船ターミナルに到着。まず乗船券を買った。窓口は3つあって、2つが伊豆大島〜神津島航路の窓口、1つが三宅島〜八丈島航路の窓口。3人程度が並んでいたがすぐに買うことができた。乗船券の半券は乗船票になっており、売り場近くのカウンターであらかじめ印字された氏名を確認して、性別・年齢・住所・乗船目的を記入する。
その後はターミナル内のベンチに座って時間をつぶす。21時40分に乗船開始のアナウンスがあり、ターミナルを出て埠頭に移動。
行きと帰りでまったく異なる船内の雰囲気
さるびあ丸に3度乗って面白かったのは、乗客のテンションが行きと帰りでまったく違うこと。離島の住民でないかぎり、大型客船は非日常の空間。マリンスポーツ目的と思われる若いグループは、出航前からデッキに車座に乗って、ビールとおつまみ片手にウェイウェイと盛り上がる。
出航して約10分後、お台場に架かるレインボーブリッジをくぐる際は、スマホで撮影する人々でデッキはごった返していた。
3月に入ったとはいえ、22時を過ぎた海上は気温が下がる。しかも風が通り抜けるので体温を奪われる。さすがに1時間程度で客室に戻ったが、二等和室ではワイワイ大騒ぎするグループも多い。0時消灯後は、就寝する客に迷惑がかからないよう、中央に移動して深夜2時すぎまで盛り上がっているグループもいた。
一方、帰りは伊豆大島から多くが乗船するものの、何となく倦怠感が漂い、二等船室では寝転がって熟睡する人が多かった。行きと帰りのテンションの違いが面白かった。
東京〜利島間、船上からの見どころ3つ
東京〜利島間の航路上、見どころがいくつかあった。二等和室には、海面に近い小さな丸い窓しかないので、デッキに出て眺望を楽しんだ。
まず、竹芝出港後、横浜までの夜景が美しい。レインボーブリッジ、ベイブリッジをゆっくりとくぐり抜けるシーンは心躍る瞬間。オレンジ色のナトリウム灯やLEDに照らされたコンテナ埠頭、翼を点滅させながら羽田空港を飛び立つ飛行機なども魅惑的だった。
次に相模湾沖、太平洋に昇る朝日。今回はちょうど日の出直後に伊豆大島・岡田港に着岸した。季節により日の出の時間は前後するが、海上で見る朝日は格別だった。
帰りは浦賀水道。17時前後に浦賀水道を通る。大型・小型の貨物船が頻繁に行き交う中、左側に三浦半島の城ヶ島から観音崎灯台、右側には房総半島・内房の風景が続く。
そして、東京湾に入る直前に灰色の人工島が3つ見えてくる。第一海堡・第二海堡・第三海堡、1890年から1920年にかけて建設された人工島で、東京湾への艦隊の侵入を防ぐ目的を持つ要塞跡だ。中でも第二海堡は間近に見ることができた。
天候に恵まれれば、相模湾の向こうに富士山を望むことができるのだが、今回は曇天のため見られなかった。
その他、さるびあ丸の留意事項
その他、いくつか気になった点を書き留めておきたい。
1つ目、船内のWi-Fi。
さるびあ丸の船内は無料Wi-Fiが利用できる。ただ、Wi-Fiポイントへの接続は比較的よいが、船上から基地局への通信状況が悪いのか、多くの乗客が同時接続するためか、使い物にならなかった。浦賀水道に入ると陸上にあるキャリア基地局と通信ができるので、Wi-Fi利用よりもはるかに快適だった。
2つ目、貸毛布。
二等和室の床は絨毯になっているが寝心地はよくなかった。そこで貸毛布を下に敷いて寝ると快適だった。貸毛布は1枚100円。可能なら2枚借りて、上下毛布に挟まるように寝ると眠りやすい気がした。
3つ目、レストラン。
メニューは、ご飯もの、麺類、一品料理となかなかに充実していた。チャーハン(800円)、オムライス(900円)といった定番ものから、明日葉カレー(1,000円)、島海苔塩ラーメン(1.000円)等、伊豆諸島にちなんだものまでいろいろあり。食券の販売機の前で目移りした。ボリュームも大。窓際のテーブルに座ることができると、海を横目に食事ができる。
ただ、営業時間が限られているので、乗船客が多いと並んで待つ必要あり。営業時間:22:00~23:30(日曜日~木曜日発)、22:00~24:00(金・土曜日発)7:30~8:30、12:00~15:00、17:30~18:30(横浜寄港時18:00~19:30)。
私は帰りに、伊豆大島からの大量の乗客を避けて、利島出港(12時50分)と同時に昼食を取りに出かけた。
2023年春 利島旅行の記録
【1】東海汽船「さるびあ丸」の船旅レポート
【2】利島・宮塚山「山廻り」巡礼登山
【3】民宿「かおり荘」が素敵だった
【4】集落・遺跡・ツバキ畑、島の北部を散歩