民宿「かおり荘」が素敵だった – 利島旅行(3)
利島の宿泊施設は8軒の民宿のみ
今回の利島登山旅行は2泊3日の行程。1泊目は大型客船「さるびあ丸」で、2泊目は「かおり荘」という民宿に泊まった。
利島の宿泊施設は、利島村の公式サイトによると8軒の民宿のみ。楽天トラベル、じゃらん等の宿泊予約サイトではネット予約できなかった(2023年3月現在)。それぞれの民宿のサイトからメールやフォームで申し込むか、電話で予約を取る。いくつか宿は電話のみ。
宿泊料は利島の民宿共通で1人1室1泊2食付で8,500円(GW・夏季・年末年始9,000円)、素泊まり6,000円だった。なので、どの宿に泊まるか、料金で迷うことはない。なお、2023年4月以降、燃料費の高騰等の理由で、1室1泊2食付で10,000円GW・夏季・年末年始11,000円)、素泊まり6,500円に値上げとなる。
出発3 日前、天気予報で「晴れ」を確認してから利島行きを決めた。直前に6軒の民宿に電話をしたが、最初の2軒はすでに満室、1軒は食事なし、もう1軒は誰も電話に出なかった。6軒目につながったのが、今回宿泊した「かおり荘」だ。
電話の向こうは若い女性の声。1人なら宿泊可能とおっしゃる。宿を選ぶ余裕はない。すぐに予約を申し入れた。
予約を入れた後、一応、ネット上で情報を調べてみた。利島村の公式サイトには「家庭的な宿でゆっくりとおくつろぎください。」とのみ書かれている。Googleマップに口コミは5件ほど、食べログには1件。情報は少ないが、いずれも肯定的な口コミだった。
朝一番に「かおり荘」にチェックイン
予約した際「港まで車で迎えに行きましょうか?」と訊かれた。朝8時前に港に着いて、すぐにチェックインできるだろうか?と、一般的な宿の常識に照らして少々意外に思った。また、「わざわざ迎えに来てもらうのはどうか」とも考えたが、ご好意に甘えることにした。
実際、島に到着してから、宿がある集落まで坂道を上る必要があり、また想像よりも距離があったので、迎えに来てもらって正解だった。下船から宿までについては、利島・宮塚山「山廻り」巡礼登山 – 利島旅行(2)にも書いた。
港に迎えに来ていただいたのは、電話予約の際にお話した方と同じ女性のようだった。私の他にもう一人、登山目的の宿泊客がいて後部座席に並んで座った。
軽自動車はクネクネと坂道を上がり、最後に細い路地に入った。路地に入る際、「ここちょっと擦れますから」と女性が宣言。宣言のとおり、車の底がザザッと擦れてびっくりした。
客室は「田舎のおじいさんの離れ」の趣
宿に到着。入口には癒やし系のゆるい青文字で「かおり荘」と書かれている。女性が開き戸をガラガラと開けて、中に入ると廊下には、これまた癒やし系の魚のイラストが描かれている。迎えに来ていただいた女性の趣味だろうか。
客室は5つほどあって、私は一番奥の「向日葵」という部屋だった。扉を開けて部屋に入ると、窓が開け放たれていて、白いベランダ(というよりも物干し場)の向こうに青い海が見える。心地よい空気が部屋を満たしていて、一瞬でこの部屋が気に入った。
かおり荘は宮塚山の中腹、集落の上の方にあるので、ベランダに出ると家々の屋根の向こうに海と伊豆半島・伊豆大島が見えた。視界に入る電線が少々じゃまではあるが、それもリアルな離島の風情。
客室の広さは約6畳。部屋の真ん中に一人用の小さなテーブルと座布団。テーブルの下には籐の枕があった。また、部屋の片隅には小型の籐の椅子が置かれている。
押入れと小さな床の間がある。押入れの中の3分の2は布団の収納スペース。残り3分の1はハンガーで洋服を掛けられるようになっていた。床の間にはテレビが置かれている。
まるで「夏休みに帰省した“田舎のおじいさんの離れ”」のようだ。
宮塚山の登山を終えて、午後、籐の椅子に座って読書をすると、時折部屋の中をさらっとした海風が抜け、窓の外からは子供の声が聞こえて、至福のひとときを過ごすことができた。
居間・仏間で食べる朝食と夕食
夕食は18時半または19時から、朝食は7時・7時半・8時から、客室のある棟とは別の棟で供される。和室の居間に大型の座卓が3つ並べてあり、奥は仏間になっていて、これまた大型の仏壇が鎮座している。和室の長押の上には故人の肖像写真や表彰状がずらりと飾られていた。
客室が「田舎のおじいさんの離れ」なら、食堂はまさに「母屋」。畳の上に腰を下ろして見上げると、何とも懐かしい想いがこみ上がってきた。
夕食は島の素朴な家庭料理。この日のメニューはお刺身・焼き魚・鶏のフライ・揚ナス・明日葉の和え物・味噌汁。お腹いっぱいになった。朝食は魚の干物・ハムエッグ・ひじきの煮物・生玉子・海苔・味噌汁だった。
料理も若い女性によるもの。どうやら「かおり荘」は受付・掃除・炊事から送迎まで女性一人で切り盛りしているようだ。実は若女将だったのだ。
若女将に「“かおり荘”というネーミングは、お名前が由来ですか?」と尋ねたところ、「私の名前は“かおり”ではなく、おじいさんの代から“かおり荘”でした。なぜ、“かおり”なのかはわかりません」とゆったりとした口調でお答えになった。なるほど。祖父の代からの民宿を継がれたのか…。
ちなみに、利島村公式サイトの「島の紹介と移住ガイド」には下のように書かれている。
利島の方言の大きな特徴は、言いまわしが大変ゆっくりしていることです。現在でも、お年寄りが使う方言は、若い世代に比べ、比較的ゆっくりとしていますが、もっと昔はそれ以上にゆっくりしていたとのことです。
利島村公式サイトより
確かに宿の若女将も、商店の男性もゆっくりとした口調だった。島のスローライフが言葉に表れているのかもしれない。
その他、お風呂・トイレなど
「かおり荘」の留意事項をいくつか書いておく。
お風呂
浴室そのものは4人家族が一緒に入れるくらいの広さだった。ただ、浴槽は家庭用のもの(金属製)。一人旅だとゆっくり湯につかれるが、二人以上だと交代で湯船に入ることになる。フカフカのタオル・バスタオルは更衣室に完備されていた。シャンプー・コンディショナー・ボディソープも浴室にあった。更衣室の入口に掛けられた入浴中を示す札を裏返して、交代で入る。
トイレ
個室が2つ。ウォシュレット完備。洗面台も2つあった。ただ共用のコップは一つだった。コップを持参した方がよいかもしれない(私は登山用のコップを持ってきていた)。
宿から港までの送迎
船の到着時間・出航時間に合わせて、港まで自動車で送迎してもらえる(無料)。
宿泊代の支払い
現金のほか、クレジットカードとIC型電子マネーも利用可能だった。
「かおり荘」、故人であるおじいさんの息づかいと若女将の趣味がマッチングした、不思議な魅力のある民宿だった。建物は古いけれど、清潔で隅々まで掃除が行き届いていた。今度はツバキのベストシーズンに再訪したい。
民宿「かおり荘」
住所:東京都利島村6番地
電話:04992-9-0038
2023年春 利島旅行の記録
【1】東海汽船「さるびあ丸」の船旅レポート
【2】利島・宮塚山「山廻り」巡礼登山
【3】民宿「かおり荘」が素敵だった
【4】集落・遺跡・ツバキ畑、島の北部を散歩
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