前方後円墳に上る! 甲府・銚子塚古墳と曽根丘陵公園
遺跡が密集、甲府市南西部の曽根丘陵
山梨県のミュージアム2館と霊山・身延山を巡る旅。初日午前は山梨県立美術館でミレーとバルビゾン派の絵画を鑑賞(訪問記録はこちら)。昼食の後、山梨県立考古博物館のある曽根丘陵公園(甲斐風土記の丘)に向かった。
曽根丘陵公園は甲府盆地の南西部にある。この一帯は山梨県における古墳文化の発祥地とされ、東日本で有数の大きさを持つ前方後円墳・甲斐銚子塚古墳をはじめ、丸山塚古墳、上の平遺跡など、前期古墳時代の遺跡が密集している。
公園内には遺跡のほかにも県立考古博物館があり、旧石器時代から江戸時代までのさまざまな発掘物を展示している。考古学ファンは一日過ごしても飽き足りない歴史公園だ。2007年には「日本の歴史公園100選」に選ばれた。
銚子塚古墳に上り、前方後円墳の構造を実感
ここの魅力は大型前方後円墳・銚子塚古墳の上を散策できること。西日本には銚子塚古墳よりも大きな規模の前方後円墳がたくさんあるが、多くが宮内庁管轄の天皇陵とされているため、一般人は足を踏み入れることができない。
実際に前方後円墳の上を歩いてみると、古墳の構造を立体的に体感できる。実は今回、前方後円墳に上ったのが私にとって初めての体験だった。特に石棺が設置された場所に立ってみると、当時の人たちが古墳で示そうとした埋葬者の権威について想像することができた。
状態よく古墳が残った理由とは?
前方後円墳の銚子塚古墳以外にも、大型の円墳「丸山塚古墳」、小型の円墳「カンカン塚古墳」「坏塚古墳」、方形周溝墓「上の平遺跡」など、曽根丘陵公園ではバラエティー豊かな古墳を見ることができる。
では、この一帯で、なぜ保存状態がよい古墳に親しむことができるだろうか?
その秘密は、丸山塚古墳のすぐそばに立つ石碑「郷民擁護碑(ごうみんようごひ)」にあった。石碑のすぐそばに以下のような説明がある。
「郷民擁護碑」と丸山之碑
「郷民擁護碑(ごうみんようごひ)」には、次のように記されています。
「郷民擁護神霊の まし満す所なりうやまへハ 即福を降しをかせハ すなわち祟りあらん」
この意味する内容は、大まかに以下のとおりです。
「ここは、この地を護る神様がいらっしゃるところです。これを尊いものと考えて敬えば、その時は福がもたらされ、大事にしなければ、その時は祟りが起こるでしょう。」
要約すると、「この場所を大切にしましょう!」ということを伝える碑です。この碑は、江戸時代の天保11年(1840)8月に、市川代官所の代官 小林藤之助と、この近くに所在する浄照寺住職の新田雲里が建立したもので、もとは、みなさんの背後にある、丸山塚古墳の上にありました。
「郷民擁護碑」説明板より
(中略)
遺跡などにまつわる祟りの伝承は、江戸時代に多く見られますが、このような伝承によって、結果的に遺跡が守られてきたという側面もあります。「郷民擁護碑」は、このような伝承が形として表された山梨県内唯一の資料です。また、全国的に見ても珍しい事例です。
なるほど、「神の祟り」を信じた人々によって、この遺跡が守られてきたという。
そういえば、江戸時代、古墳の上に社が設置され、神社として参拝する人々の姿を描いた絵画を見たことがあった。
山梨県曽根丘陵公園 公式サイト
Googleマップで山梨県曽根丘陵公園の場所を確認
2023年春 甲府・身延山旅行の記録
【1】山梨県立美術館でミレー『種まく人』をじっくり。見どころを解説
【2】前方後円墳に上る! 甲府・銚子塚古墳と曽根丘陵公園
【3】山梨県立考古博物館は、愛嬌ある土偶の顔が見どころ
【4】身延山久遠寺、西日が照らす五重塔と晩鐘の響き
【6】身延山の宿坊、700年の歴史を持つ「山本坊」宿泊体験
【7】身延山登山、奥の院思親閣と山中の僧坊巡り
【8】身延山久遠寺の総門を車でくぐる