講義ノートコピー本の「コピー対策」
大学時代、試験前になると、正門前の文房具店で講義ノートのコピー本が売られました。まめに授業に出席する学生のノートを、文房具店がコピーしてホッチキスで製本しただけの簡素な本です。一般教養課程で、1講義1冊500円でした。私も、数冊購入したことを覚えています。
このコピー本、面白い細工が施されていました。本を見開きにすると、天地のサイズを5つに分割して、天から2番目と4番目の位置に、ベタっとピンクの太い帯が敷かれていたのです。天から、白、ピンク、白、ピンク、白という具合です。
最初、私はこの「デザイン」の意図がまったくわかりませんでした。ところがある日、友人にせがまれて、このコピー本を貸した際、その機能に唖然としました。このデザインは、文房具店が編み出した「コピー本のコピー対策」だったのです。
コピー本をただ読むだけなら問題ないのですが、コピー機でコピーするとその帯部分が真っ黒になって、本文が判読できなくなる仕掛けです。今ならカラーコピー機もポピュラーになりましたし、白黒コピー機にもファインモードや写真モードがあるので、コピーは可能でしょう。しかし、私が大学に通っていた1980年代半ば、コピー機の機能はまだまだシンプルなもので、「2本のピンク帯」の効果はてきめんでした。
私は常々、ブックデザインにしろWebデザインにしろ、目的と機能が最初にありきと考えています。ですが、「2本のピンクの帯」に勝る機能には、なかなかお目にかかれません。
ところで、「講義ノート」でWeb検索してみると、大学の講義ノートが多数ヒットしました。講義ノートがWeb上で公開される時代、懐かしい正門前の文房具店でいまだにコピー本は売られているのかな。
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