鶴見線、京浜工業地帯を走る鉄道小旅行へ
東京に出てきて15年あまり経過したので、首都圏の鉄道路線は一部区間であればたいてい一度は乗ったことがある。ただ、子どもの頃、時刻表の路線図で見て、いまだ乗ったことがない気になる路線があった。それは鶴見線と南武線の尻手から先(南武支線)。
通常の路線は、始発駅と終点を一本の線で結ぶもの。ところが鶴見線、南武支線は距離が短いうえ、たったひと駅のために何本かに枝分かれしている。実際にはどんな運行をしているのか、どんな風景なのか、ずっと気になっていた。子どもの頃からの疑問を解決するべく、思い立って鶴見線と南武支線に乗りに行った。
川崎駅から立川方面に向かう南武線に乗って、次の尻手(しって)で下車。島型ホームの向かい側に、南武支線の浜川崎行きが来る。緑色と黄色のツートンカラーの車両で、たった2両編成だった。車内はガラガラ。首都圏で2両編成の列車なんて見たことがない。平日の朝夕のラッシュ時は車両が増えるのかもしれないが。
南武支線はワンマン運転。15分ほどで終点の浜川崎に到着。ドン突きの小さなホームはローカル線独特の風情があった。
駅はひなびているが、駅を出てすぐにある踏切を、長い編成の貨物列車やコンテナ車が元気よく通り過ぎた。この路線の主役は人よりもモノや原材料なのかもしれない。
駅の向かいはJFEスチール東日本製鉄所。鶴見線の浜川崎駅には専用の出口もあって、工場で働く人たちの駅であることがわかる。「鋼管通」という“硬派な住所”も京浜工業地帯ならでは。
小さな道路を挟んで、南武線の浜川崎駅と鶴見線の浜川崎駅は少し離れている。直接、乗り換えはできない。ただ、どちらも無人駅でSuicaをかざす小さな「改札機」があるだけだった。
15分ほどして、鶴見行きの列車が来た。鶴見線は黄色と青色のツートンカラー。昼間なのでローカル線ののどかな空気だったが、平日朝夕の通勤時の風景を見てみないと、この路線の意味合いはわからないのだろうな。
ところで、子どもの頃、日本ナンバーワンの工業地帯といえば京浜工業地帯だった。それが今では、製造品出荷額を中京工業地帯、阪神工業地帯に抜かれて第3位らしい。30年間で、日本のメーカーの生産拠点は海外にシフトしたので、何となく背景は理解できる。
今回、南武支線の尻手~浜川崎間、鶴見線の浜川崎~鶴見間しか乗らなかったが、いつか支線の大川、海芝浦にも出かけてみたい。