身延山の宿坊、700年の歴史を持つ「山本坊」宿泊体験

日蓮の直弟子・日頂上人が創設した「山本坊」

霊峰・身延山に登る山梨県一泊二日の旅。ここまでの記録は下の通り。

せっかくの霊峰登山。久遠寺の門前町の宿坊に前泊することにした。身延山には20軒もの宿坊がある。多くが久遠寺の塔頭寺院で、宿坊の公式サイトでそれぞれの由緒について読むといずれも興味深い。

迷いに迷ったが、結局、楽天トラベルで予約ができる宿坊の中から「山本坊」を選んだ。

山本坊(身延山)
久遠寺の三門に続く門内商店街(写真右)。この通りから、東谷地域に向かう日朝通りを少し入ったところに山本坊の入口あり

公式サイトによると、日蓮上人の6人の直弟子の1人・日頂上人により創設。徳川家康の側室「お万の方」や水戸の徳川光圀が宿泊したことがある、徳川家ゆかりの宿坊と自己紹介されている。

日頂上人は駿河の出身。「伊予阿闍梨」と称される。日蓮の佐渡配流の際にも彼に従って佐渡に赴いている。山本坊を創設して日蓮の墓所の輪番に参加。その後、下総国真間(千葉県市川市真間)の弘法寺を拠点として、布教に努めたらしい。

山本坊が創設されたのは実に700年前。100年そこそこの老舗旅館にはない「縁起」を持つ。

客室が広い! 天井が高い!

山本坊は、久遠寺周辺の宿坊の中でも、三門に近い中谷といわれる場所にある。三門に続く門内商店街から、東谷地域に向かう日朝通りを少し入ったところに入口がある。

入口から駐車場へはかなりの急傾斜。車で一気に駆け上がったものの、駐車スペースは3台分ほど。バックで駐車する自信がなく、前向きに駐車。翌朝、宿坊の女将さんにキーをお渡しして、後向きの駐車にしてもらった。

クルマを下りて、少し石段を上がると本堂の前へ。ひなびた山寺の趣。

山本坊(身延山)

右手に宿坊の入口があり、引き戸の前に猫がたたずんでいたが、私の顔を見ると警戒して立ち去った。後で宿坊の女将さんに聞いたところ、2匹の猫が境内に居ついているらしい。

宿泊の書類に氏名・住所等を記入すると、部屋に案内された。外から見るよりも建物の中はかなり広くて、本堂の隣の部屋に通された。

8畳の居間が2室分。1室は床の間があり、大きな座卓が置かれている。座卓の上にはお茶とお菓子。床の間に掛け軸と小さなテレビがあるほか、小型の石油ファンヒーターが1つ。宿坊らしいシンプルな客室だ。

山本坊の客室(身延山)
宿泊した客室。左のふすまを開けると仏間があった

もう1室にはふとんが敷かれており、古風な衣桁(着物掛け)があった。天井はお寺の仕様なのか、ずいぶんと高さがある。奥のふすまを開けてみると、金色に輝く大型の仏壇がある仏間になっていた。

たった一人で2部屋を占有できるとは、なんというぜいたく。

静かな個室で食べるヘルシーな夕食・朝食

荷物を解いて久遠寺に参拝した後、18時前に宿坊に戻った。夕食の支度ができ次第、呼びに来てくれるとのことで客室で待機。18時すぎに高齢の男性(ご住職の尊父?)が迎えに来て、夕食の部屋に案内された。

ここも個室だった。6畳の畳の部屋の真ん中に黒い食卓が置かれており、一人で食事を取る。コロナ感染症対策という点では万全の備えだ。

山本坊の食事部屋(身延山)
個室で一人で食事

夕食はヘルシーかつシンプル。お刺身・焼き魚・煮物・酢の物・吸い物・味噌汁・ご飯。50代男性にはちょうどよい量だった。ご飯がおいしくて、2杯半平らげてしまった。食後に飲む日本茶が、何とも落ち着く。

山本坊の夕食(身延山)
この日の夕食。酢の物が美味だった

朝食も同じ個室だった。メニューは身延山名物の湯葉刺し身のほか、山菜と根菜のおかず。これぞ、精進料理だ。

山本坊の朝食(身延山)
山菜・根菜が中心の朝食

寝坊をして、朝のお勤めに車で送ってもらう

ところで、翌朝5時半開始、久遠寺本堂での朝の勤行に参加するつもりだったが、目が覚めたら5時半を過ぎていた。あわてて服を着替えて準備をして、宿坊の玄関に出たところ、女将さんから声がかかった。「起こせばよかったですね。本堂まで(車で)送りましょうか?」と申し出てくださった。

昨日、本堂に続く287段の石段「菩提梯(ぼだいてい)」を上って、息を切らしたばかり。ありがたく送ってもらうことにした。

女将さんはミニバンの助手席に私を乗せると、慣れた運転で宿坊入口までの急傾斜をなんとバックで下り、早朝の参道を通り過ぎて、本堂への裏道(業務用道路)を一気に駆け上がった。

山本坊(身延山)
この急傾斜をバックで下りた!

5分ちょっとで本堂に到着。本堂での朝のお勤めは半分以上終わっていたが、仏殿での焼香・説法には参加できた。

昨夕、日没の久遠寺境内もよかったが、朝の空気は本当にすがすがしい。

久遠寺本堂前(身延山)
朝7時前の久遠寺本堂前。左は身延山

朝7時に山本坊に戻り、この日の身延山登山に向けて、自家用車をあらかじめ三門横の無料駐車場に移動(この駐車場、昼間は常に満車状態らしい)。

7時半から朝食を取り、8時半前に宿泊料を現金で支払ってチェックアウトした。


宿坊 山本坊
山梨県南巨摩郡身延町身延3560
TEL:0556-62-0041
公式サイト
Google マップで宿坊 山本坊の場所を確認


2023年春 甲府・身延山旅行の記録
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【3】山梨県立考古博物館は、愛嬌ある土偶の顔が見どころ
【4】身延山久遠寺、西日が照らす五重塔と晩鐘の響き
【6】身延山の宿坊、700年の歴史を持つ「山本坊」宿泊体験
【7】身延山登山、奥の院思親閣と山中の僧坊巡り
【8】身延山久遠寺の総門を車でくぐる


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Posted by Asanao