河井酔茗の詩「ゆずりは」に寄せて

仕事始めの1月5日(月)、毎日新聞の社説は泣かせる内容でした。

「夢見る力」を取り戻そう 世代超える価値を求めて(毎日新聞)
民主主義とは、今生きている人の投票による子孫への独裁である。子孫の将来は、現在の有権者の想像力のなかにある。それはなにも経済の成長力の見通しや、国民負担率の推計といった数字で表される指標のことだけをいっているのではない。今現在のわたしたちの暮らしが、どのような未来への夢や理想によって支えられているか。それが子供らの運命を決めていくことをいいたいのだ。

確かに、国家財政の半分にあたる負債を子供らのツケに回しておきながら、一方で「愛国心を持て」というのはない話です。家庭の単位で考えてみてください。自分の子供に、手に負えない借金など残そうとしないはず。親の背中を見て子は育つ、だと思います。

ちなみに、社説のネタ元の詩は、詩人・河井酔茗の「花鎮抄」に収録されている下記。

ゆずりは~「花鎮抄」より~

河井酔茗

こどもたちよ、
これはゆずりはの木です。
このゆずりはは
新しい葉ができると
入れ代わって古い葉が落ちてしまうのです。
こんなに厚い葉
こんなに大きい葉でも
新しい葉ができると無造作に落ちる、
新しい葉にいのちを譲って。
こどもたちよ、
おまえたちは何をほしがらないでも
すべてのものがおまえたちに譲られるのです。
太陽のまわるかぎり
譲られるものは絶えません。
輝ける大都会も
そっくりおまえたちが譲り受けるものです、
読みきれないほどの書物も。
みんなおまえたちの手に受け取るのです、
幸福なるこどもたちよ、
おまえたちの手はまだ小さいけれど。
世のおとうさんおかあさんたちは
何一つ持っていかない。
みんなおまえたちに譲っていくために、
いのちあるものよいもの美しいものを
一生懸命に造っています。
今おまえたちは気がつかないけれど
ひとりでにいのちは伸びる。
鳥のように歌い花のように笑っている間に
気がついてきます。
そしたらこどもたちよ、
もう一度ゆずりはの木の下に立って
ゆずりはを見る時がくるでしょう。

社説によると、学校の教科書に掲載されているようですが、この詩の味わい、子供にはわからないでしょうね。

酔茗詩抄(岩波文庫)
著者/河井酔茗 発行/岩波書店

ゆずりは
ユズリハ

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Posted by Asanao