ジョン・ロック『市民政府論』が読みやすい
先日、マルクスの『経済学・哲学草稿』について書いたので、政治・経済学関連の古典をもう一冊。
マルクスと逆に、私が著者としてお付き合いしたい“先生”の筆頭は、ジョン・ロック。17世紀の政治学者で『市民政府論』の著者です(とはいっても、鵜飼信成氏の翻訳しか読んだことはありません)。
ロックの名前を知ったのは、高校時代、政治・経済の授業において。その時は、「ロック=市民政府論」という暗記対象でしかありませんでしたが、大学に入って、古本屋で岩波文庫の『市民政府論』を手に取った際、第一章 序説のリズミカルかつ平明な文章にぐんぐんと引き付けられました。小説にしろ、論文にしろ、いい文章は最初の数行で読者を虜にするものですね。さすがは、啓蒙主義の父です。
以下、第一章 序説の最初の数行を引用。
第一に、アダムは、父としての自然の権利によっても、あるいはまた神から積極的に与えられるということによっても、論者の主張するようなその子供達に対する権威とか、あるいは世界に対する支配権とかいうようなものを有してはいなかったこと。
第二に、かりにアダムがそれをもっていたとしても、その相続人たちは、なんらそういう権利を有してはいなかったこと。
第三に、かりにアダムの相続人たちがそれをもつのだとしても、起り得るべきあらゆる場合に、誰が正当な相続人であるかを決定する自然法も神の定めた実定法も存在しないのだから、相続権したがって支配権を、確実に決定することはできなかっただろうということ。(『市民政府論』ジョン・ロック著、鵜飼信成訳、岩波文庫より)
17世紀にロックが語りかけた、序文の「人民の福祉は最高の法である」というフレーズは、21世紀の今となっては、恥ずかしいくらいに健康的ですが、現代日本の政治状況を見るに、まだまだ輝きを失わないようです。
※補足
この記事を書いた2004年当時は、岩波文庫より鵜飼信成訳『市民政府論』として発行されていましたが、現在は加藤節訳の『完訳 統治二論』の中の一つとして発行されています。