答えは街にある
20代、私が情報誌の編集者時代に薫陶を受けた編集長のモットーは、「答えは街にある」でした。
部下の編集者に、「お前、ちゃんと遊んでいるか?」というのが彼の口癖でした。そんな編集長が率いる編集部だったので、昼間堂々とホワイトボードに「アメリカ村パトロール」なんて書いて出かけて行っても、誰もとがめない環境でした。もちろん、新しくてカッコいいショップを見つけることなく、編集部に帰ることは許されませんでしたが。
ときどき、原宿や神南の裏手を通り過ぎると、毎日、何時間も神戸や大阪、京都の街をくまなく歩いてロケハンしたり、ショップやレストランと格闘していた頃を思い出します。そして、思わずもう一度、1日10軒、ショップ撮影・取材なんてやってみたくなります。20代の経験は大きいです。今でも「メディア作り=まず、街に出る」という図式が意識の深層にある気がします。
一日のほとんどを会社の中でパソコンに向かっているだけに、たまに街に出てみると、人の喧騒や、おいしいもの、耳ではなく体で聴く音楽が、大いに五感を刺激します。やはりライブでダイナミックな街にこそ、情報の本質はあるような気がします。
インターネットメディアのプロデューサー諸氏、街に出ようよ。
テレビ視聴率の低下、新聞部数の激減、出版の不調―、未曾有の危機の原因はどこにあるのか?「贈与と返礼」の人類学的地平からメディアの社会的存在意義を探り、危機の本質を見極める。内田樹が贈る、マニュアルのない未来を生き抜くすべての人に必要な「知」のレッスン。神戸女学院大学の人気講義を書籍化(Amazonより)
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