感想/モーリーン・デイリ『十七歳の夏』

昔から、私はギンガムチェックに弱いです。女性が、ギンガムチェックのシャツ、ギンガムチェックのスカートを着ているだけで、何だかステキに錯覚してしまいます。ですので、初めて今はなき「角川文庫マイディアストーリー」を目にしたときは、作品はともかくカバーで正気を失ってしまいました。素晴らしいシリーズでした。作品はともかく。

そんな「角川文庫マイディアストーリー」の中で、夏の1冊といえばモーリーン・デイリ著『十七歳の夏』。カバーのストーリー要約がとにかくよいのです。

高校を卒業した17歳の夏、マクナイトの店でジャックと出会ったアンジイ。ヨットに乗ろうというジャックの誘いで、初めてのデートへ出かける。何を着ていこう? 何を話そう? 他の女の子はこんな時どうするのかしら‥‥? ジャックの仲間達のたまり場で、箱入り娘のアンジイは初めてビールの味を知る。初めての嫉妬、初めてのケンカ、そして仲直りのキス、すばらしい日々のうちに別れの時が近づき‥‥。

全編、「わたくし」の一人称で書かれています。今、読み返すと、この「わたくし」という美しい響きが、リフレインのように本文で繰り返され、現代小説にはない爽やかで清潔な雰囲気を醸し出しています。リストやラフマニノフのソナタがメインのピアノコンサートにおいて、アンコールでモーツァルトの小曲を聞いたような気分でしょうか。

今や失われた、懐かしきひと夏の恋を体験したい方に、おすすめの一冊。

十七歳の夏(角川文庫)
著者/モーリーン・デイリ 翻訳/中村 能三
発行/角川書店

書評・感想文小説

Posted by Asanao