庄内旅行- 伝統的多層民家が残る田麦俣に宿泊

2023年4月15日

田麦俣多層民家

夏の旅も4日目にして、いよいよ出羽三山へ向かう。鶴岡市内で宿泊して湯殿山に向かうことを当初考えたが、楽天トラベルを検索すると市内のホテル、旅館はいずれも満室。そこで、湯殿山のふもとにある田麦俣(たむぎまた)の民宿に電話したところ、一人なら宿泊可能とのこと。田麦俣は多層民家で知られる古い集落で、湯殿山が雪に閉ざされるシーズンオフはここがバスの終点となる。

田麦俣への地図

飛島から船で酒田港に着いたのが14時25分。タクシーでJR酒田駅に向かい、羽越線の普通列車で鶴岡へ。そこから庄内交通の田麦俣行きのバスに乗り、終点一つ前の田麦俣口に着いたのが18時。途中、民宿の方が「クルマで迎えに行くので今どのあたりですか?」とケータイに電話がかかった。停留所から民宿のクルマに乗せてもらって約5分。この日の宿、田麦荘に到着。

月山花笠ラインの国道沿いに一軒ポツンとある民宿。観光旅行者よりも、付近の道路工事のために宿泊している人が多いようだ。民宿の女性いわく、このあたりはとても山崩れが多い地域だと。現在、高速道路・山形自動車道が建設中だが、山あいに釘を刺すように立つコンクリートの支柱を見ると、大丈夫かなと思った。

国内の一人旅の際、宿泊代が安いのでビジネスホテルを選んでしまうことが多い。バス、トイレは共用だが、畳の部屋に床の間の掛け軸。ロビー代わりの炉端に気持ちが安らいだ。

田麦荘

すでに夕食が用意されているらしいので、すぐに食堂へ。「ビジネス客ばかりなので、大したものは出せませんが」と民宿の娘さんは言ったけれど、素朴な家庭料理にこれまた心が和んだ。

田麦荘の夕食

窓の外を眺めると、雲に隠れた月山の山並みが眺められる。素敵なトレッキングの前夜だ。

田麦荘からの月山の眺め

田麦荘は集落から離れた国道沿いにある比較的新しい建築だが、もともと伝統的な多層民家で「観光ポスターのロケにも使われたことがあった」と、民宿のお母さんがおっしゃった。下がお母さんが住んでいた家。

昔の田麦荘のポスター

さて、翌朝。湯殿山行きのバスが田麦俣のバス停を出るのは朝10時13分。朝食を7時30分に取り、バスの時間までずいぶんと時間があるので多層民家のある集落を散歩することにした。

「せっかくなら七つ滝も見れば?」と、民宿のお母さんがクルマで山道を登り、六十里越街道の起点に近い七つ滝まで送ってくれた。滝の高さは約90メートル。幾本もの流れの筋が岸壁の途中で一本にまとまっているのがこの滝の特徴。ただ、一昨日にダイナミックな奈曽の白滝を間近で見ただけに、ちょっと物足りなかった。こちらの方が“白滝”という風情にふさわしいかも。

七つ滝

七つ滝から山道を集落に向けて降りて行くと、六十里越街道の入り口があった。六十里越街道は、鶴岡から湯殿山南側を通り、山形へと続く湯殿山詣の古道で、庄内藩主の参勤交代路としても利用されたという。ここは、地を這いつくばって歩くほどの急坂であることから「蟻腰坂登り口」といわれている。六十里越街道は最近、トレッキングコースとして人気らしい。

ちょうど朝9時に田麦俣の集落に到着。二軒の多層民家が残っていて、一軒は「かやぶき屋」という民宿。一軒は「旧遠藤家住宅」として公開されている。

「旧遠藤家住宅」は朝9時開館。お隣の「かやぶき屋」に声をかけて、扉を開けてもらう仕組み。このような朝早くに訪問する観光客はおらず、三階建ての民家を独り占めさせてもらった。

旧遠藤家住宅

下は一階の「おめえ」。家族団らんのリビングルーム。十数畳はある広さ。

旧遠藤家住宅「おめえ」

左下は一階「おめえ」の奥にある「かみざしき」。湯殿山大神の掛け軸が見える。右下は二階にあった糸車。養蚕と絹糸を作っていたらしい。

旧遠藤家住宅「かみざしき」

下は玄関近くの「まや」。雪深い地なので、家の中に馬屋があったようだ。わらで作った雪靴やわらじが多数展示されていた。

旧遠藤家住宅「まや」

一時間ばかり、ずいぶんと長い間、多層民家の中の空気を吸った。改めて、多層民家を少し離れたところから眺めると、これほどの茅葺きの屋根のメンテナンスはさぞや大変だろうと思った。

バスの時間が近づいたので、集落の入り口にあるバス停へ向かう。

田麦俣バス停

いよいよ湯殿山から月山を経て羽黒山へ。出羽三山のトレッキングに出発する。


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