『第36回 ぴあフィルムフェスティバル』入選作品を観に行く
仕事の合間を縫って、京橋の東京国立近代美術館フィルムセンターで行われている『第36回ぴあフィルムフェスティバル』のコンペティション部門上映会に出かけた。今週は本当に忙しくて、せっかく出かけたのに柴口勲監督の『ひこうき雲』一本しか見られなかった。25分間の短編映画だ。
それでも、出かけてよかったと思える秀作だった。
この映画は地方の中学校を舞台に生徒が生徒を、先生が先生を演じているのが特徴。中学校の終業式の一日を淡々とした流れで追う映像は、バーチャルリアリティに慣れてしまったハリウッド映画を観る目には本当に新鮮だった。水彩画のような瑞々しさを感じた。
以下、森下くるみ氏(文筆家・女優)による紹介文。
物語は夏休みの前日。とある中学校の教室で、「修学旅行の予定表」が破き捨てられるという小さな事件が起こる。一体誰が…?しかし、これをきっかけにクラスメイトの心が繋がり、大きな輪となる。
初めて観たのに、どうしてこんなに親しみ深いのだろうと思った。空気の合う人との出会いのような映画だ。それが嬉しかった。この作品では12歳~14歳の生徒がそのまま生徒役を、同じく教師が教師役を演じているわけだが、その演技は奇抜さや小賢しさとは一切無縁。とにかく、とてつもなく素直で素朴、言葉は人肌のように温かくて、微笑みのように柔らかい。健康な血の通った感覚がある。わたしはきっとそのことに一番心を揺さぶられたのだ。彼ら彼女らの経験した夏の1日は、永遠のように切なく、輝かしい。本物の若さに「二度」はない。
また、柴口勲監督はこの映画の制作の流れについて次のように語っている。
集まった中学生27名の参加希望者とまずはワークショップをおこない、キャスト14名とスタッフ13名に振り分けて夏休み中の土日に撮影。ワークショップ中に掴んだキャストの素の素晴らしい部分をそのまま生かした絵にするよう心がけ、スタッフには撮影を進めながらアドバイスをしていきました。この作品は中学生27人と一緒になって作った映画で、それは地図を持たない冒険でした。
中学生にとっては、一生の思い出に残る「夏休みの自由研究」だったのでは。
下はこの『ひこうき雲』への序章『月日貝』。
『月日貝』は『ひこうき雲』の屋上のシーンの伏線となっている。
『ぴあフィルムフェスティバル』は9月25日(水)まで東京国立近代美術館フィルムセンターで開催。その後、京都、名古屋、神戸、福岡で上映が行われる。
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