感想/青山七恵『ひとり日和』(芥川賞受賞作)
昨年から、小説は過去の芥川賞受賞作ばかり読んでいる。手当たり次第読むにも、なんらかの選択基準があった方が買いやすい。特に電子書籍の場合は。というわけで、深く考えることなく2006年下半期の第136回芥川賞受賞作、青山七恵『ひとり日和』をダウンロード。
1990年代以降の芥川賞受賞作を10数冊読むと、なんとなく共通の主人公像が見えてきた。いずれもは、通りを歩けば必ずいそうな市井の人で、何かに秀でるわけでなく劣るわけでなく、それでいて「屈託」を抱えている。それが「今の純文学」なのだろうか? そんな単純なものではないと思うけれど。
埼玉から東京に上京(?)し、アルバイト生活をする若い女子と遠い親戚のおばあさんの暮らし。なんとなく男子とつきあい、なんとなく男子と別れ。それでいて刹那さは感じられず、自然な恋愛のスタイルは水彩画のように淡白だ。
70歳の老女に対する女性として対抗心、微妙な心象を描くあたり、女性作家ならではだと思った。都会に住む若者のライフスタイルを、果物ナイフで薄くスライスし、内実をそっと読者に見せたような作品だった。
世界に外も中もないのよ。この世は一つしかないでしょ―二〇歳の知寿が居候することになったのは、二匹の猫が住む、七一歳・吟子さんの家。駅のホームが見える小さな平屋で共同生活を始めた知寿は、キオスクで働き、恋をし、時には吟子さんの恋にあてられ、少しずつ成長していく。第一三六回芥川賞受賞作。短篇「出発」を併録(Amazonより)
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