感想/森沢明夫著、小説『あなたへ』
健さん遺作、映画『あなたへ』を見損ねた。彼の表紙に惹かれ、電子書籍でダウンロードした。
この小説、Amazonのレビューでは高い評価がついているが、私は今一歩のめり込むものがなかった。著者の森沢氏は「映画の尺ではどうしても表現しきれない部分を、小説ではできるだけ丁寧にすくいとっていこうと思いました」と語っているそうだが、どうしてもロードムービーを小説として再現した印象がぬぐえなかった。
何より表紙の高倉健のインパクトが強いので、主人公・倉島英二を重ね合わせてしまい、これまでに私が見た健さんの映画作品での一挙手一投足を想像してしまう。どうしても健さんのフィルターを外して、読むことができなかった。
ただ、還暦を過ぎてこそ、心にしみる旅があることは十分に伝わった。老いてこそ旅に出たいと思った。
富山の刑務所で作業技官として働く倉島英二。ある日、亡き妻から一通の手紙が届く。そこには遺骨を故郷の海に撤いてほしいと書かれており、長崎の郵便局留めでもう一通手紙があることを知る。手紙の受け取り期限は十二日間。妻の気持ちを知るため、自家製キャンピングカーで旅に出た倉島を待っていたのは。夫婦の愛と絆を綴った感涙の長編小説。(Amazonより)