アンドラーシュ・シフの現代的なベートーヴェン
ベートーヴェン:ピアノソナタ集 第3巻
演奏/アンドラーシュ・シフ
レーベル/ユニバーサル ミュージック クラシック
クラシック音楽のCDは、20世紀の録音なら1500円程度で販売されているので、最新の録音に手を出すことが少ないです。久しぶりに、2005年2月録音、アンドラーシュ・シフのピアノソロを買いました。
買ってよかった。
このアルバムに収められている、ピアノソナタ第11番(変ロ長調)は、これまでウィルヘルム・バックハウスとアルフレート・ブレンデルのレコード時代の録音を聴いていたのですが、シフの演奏を聴いた後では、バックハウスもブレンデルも、とても古めかしく感じます。明らかに20世紀の巨匠とは違う、現代的なスタイルです。あえて言うなら、「軽さ」と「キレ」。といっても軽薄なわけではなく、インテリジェンス。例えば、ソナタ第20番(ト長調)の第1楽章。ソナタ形式の提示部の2度目の繰り返し、ふんだんに装飾音を絡めた演奏になっています。1980~90年代、“原典”志向が主流で、20年前なら異端な解釈とされていたのでは。小さなソナタの中に込めた、シフ一流の「確信的な遊び心」を感じます。
最近のシフの演奏を聴くと、グールドでさえ20世紀的に感じるのは私だけでしょうか。