ヴェーベルン編バッハ「6声のリチェルカーレ」
「ヴェーベルン→12音技法→ちんぷんかんぷん」という思い込みは捨て、まずは騙されたと思って「6声のリチェルカーレ」を聴いてください。この1曲で、私はヴェーベルンのファンになりました。
オーケストラによるアレンジといえば、ラヴェルによるムソルグスキー作曲の『展覧会の絵』が有名ですが、こちらはムソルグスキーのデッサン(ピアノ曲)をもとに、ラヴェルがカラフルな油絵(管弦楽曲)に仕立てたようなイメージ。あくまで、原曲のコンセプトの拡大にあります……エマーソン、レイク&パーマーもラヴェルと同じかな。
ところが、ヴェーベルンがアレンジした、バッハの「6声のリチェルカーレ」(『音楽の捧げもの』の中の1曲です)がすごいのは、原曲の構図をいじることなく、オーケストレーションによって、まったく新しいアートに仕立てている点です。
私は、ウォーホールが手を入れた毛沢東の肖像画を思い出します。具象的な肖像画をアレンジすることで、まったく違ったコンセプト=ポップアートを生み出したように、この「6声のリチュルカーレ」は、“編曲”よりも“作曲”に近いです。ラヴェルはオーケストレーションの職人、ヴェーベルンこそ天才だと思っています。
ヴェーベルンの管弦楽曲は、正岡子規の俳句的な切れ味が魅力なのですが、書き始めると長くなるので、次の機会に。
ヴェーベルン:管弦楽のためのパッサカリア
指揮/ピエール・ブーレーズ
演奏/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
レーベル/ユニバーサル ミュージック クラシック
「音楽の捧げもの」BWV1079から 6声のリチェルカーレほか、管弦楽のためのパッサカリア 作品1、大オーケストラのための6つの小品 作品6等を収録。
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