感想/レイ・ブラッドベリ『火星年代記』

2023年4月15日

レイ・ブラッドベリの『火星年代記』をようやく読んだ。買ってから一年以上、本棚に入れて放置していた。

1950年発行。21世紀、火星移民のエピソードを描いたSF古典小説。26の短編によるオムニバス形式を採っている。2ページ程度の超短編もあって、テンポよく読み進めることができた。

21世紀の火星移民の物語だけれど、ヨーロッパから新大陸への移民とフロンティア、そして大量消費と核戦争の恐怖というアメリカ社会への痛烈な風刺を感じた。高い精神性を持つ火星人は、アメリカ先住民へのオマージュだろう。

『華氏451度』と重なるエピソードもいくつかあった(「第二のアッシャー邸」等)。現在の日本は「安全」「快適」のもと、このような漂白された社会に近づきつつあると思った。

一つひとつは性格的な物語だけど、おしまいの方でそれぞれのエピソード一つに収斂するところが圧巻だった。