岩手旅行- 厳美渓は昭和の観光地だった
旅行初日は関東地方から東北地方への移動日で、二日目から観光開始。この日は平泉をじっくり見るつもりだったが、宿泊した一関郊外には厳美渓(げんびけい)と猊鼻渓(げいびけい)という二つの名勝があることを知った。いずれも渓谷だ。しょっぱなに渓谷の清涼な空気を深呼吸するのも素敵だ。どちらかに出かけることにした。
厳美渓は一ノ関駅前からバスで20分程度。そこから平泉に連絡するバスがある。一方、猊鼻渓は鉄道でもバスでもアクセスできるが、渓谷の中は川船で巡るようだ。この手の川船は一人で静かに巡れるならいいけど、たいてい見どころの解説がえんえんと船内で放送されて興ざめなケースが多い。なので、一人じっくり散歩できる厳美渓に出かけることにした。
駅前のホテル「東横イン一ノ関駅前」を朝8時前にチェックアウトして、8時10分のバスで厳美渓に向かった。乗客の大半は途中の国立岩手病院前で降車。終点(渓泉閣前)一つ手前の厳美渓まで乗車したのは、一人旅らしい初老の男性と私二人のみ。
バス停を降りると、いきなり「ガラスパークサハラ」という派手な門が目に入った。渓谷にどうも不似合いな昭和の観光リゾート風施設だ。 かつて、団体温泉観光にはコースとして組み込まれていたようだけど、今なお立ち寄る人はいるのだろうか。開店時間前だったので盛衰はわからない。
バス停近くの地図を見ると、栗駒山を源とする磐井川を挟んで約2kmの長さで渓谷が広がっている。遊歩道は両岸に整備されており、バス停は近くにある「天工橋」(てんぐばし)から下流の吊り橋「御覧場橋」を渡って一周する短距離の散歩コースと、上流の「長者滝橋」を経て一周する短距離コースが案内されていた。9時21分の平泉方面行きのバスに乗りたいので、短距離コースを歩くことにした。
天工橋から下流に目をやる。吊り橋が見えた。流れは穏やかだ。
厳美渓の地質の特徴について、案内板に下のような解説があった。
【岩石】
今から約900年前の火山活動による凝灰岩が、堆積当時の高温と自重の圧力のために二次的に変質して生じた石英安山岩質溶結凝灰岩で、方状節理(箱型のひび割れ)が発達しています。【甌穴】
別名、ポットホール(かめ穴)ともいい、河床の岩盤に生じたへこみに入り込んだ石が、水流とともに回転しながらまわりを削ってできた丸いくぼみをいいます。
甌穴については、宮沢賢治のエッセイ『イギリス海岸』でも説明されていたような。
遊歩道を歩く。深緑の散歩は本当に気持ちがいい。ただ、緑が茂っているので、名勝の奇岩怪岩は見ることができない。
10分弱で吊り橋の御覧場橋に到着した。数名の旅行者が対岸から歩いてきた。手荷物を見るに地元の人たちのようだ。朝一番のためか、とても空いている。平泉と合わせて観光する人たちは、もう少し遅い時間に来るのだろうか。
20分ほどで元の天工橋に戻った。
今度は少し上流にある厳美公園まで歩いてみた。下流よりも、上流の方が雄壮な景色が眺められる。豊富な水量の滝が白いしぶきを上げている。
初代仙台藩主・伊達政宗は、領地の中で松島と厳美渓を二大景勝地として褒め称えたといわれてる。ただ、昭和の観光地っぽい土産物屋やレストハウスが目に入って(ここでお店を営んでいる人たちには申し訳ないが) 、どうも風流な気分にはなれなかった。
名物の「郭公だんご」はすでに営業開始していた。対岸からロープで横断して販売するので「空飛ぶだんご」とも口コミサイトFoursquareで紹介されていた。ちょっとそそられたが、現在、糖質制限中なので甘いものは我慢した。朝食も食べたばかりだし。
一時間ほど、厳美渓に滞在。停留所で平泉方面へのバスを待った。
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