岩手旅行- 胆沢城、蝦夷の長・アテルイ投降の地
一週間の岩手旅行二日目の夜は、平泉の北にある水沢のビジネスホテルに宿泊した。宿はだいたい、前日、前々日に楽天トラベルで空き部屋を予約する。夏休みの有名観光地である平泉の宿は、最初から諦めていた。
それに、水沢の北には坂上田村麻呂が築いた胆沢城跡がある。802年に築かれ、1083年の後三年の役の頃まで約150年間、朝廷の鎮守府だった「城」だ。朝廷と戦った蝦夷の指導者・アテルイとモレは、500余人を率いてこの胆沢城にいる田村麻呂に投降したという。
大学時代、日本史専攻だった私としては、ぜひ胆沢城に訪れたくなった。
ただ、とても行きづらい場所にある。JR東北本線の水沢駅と金ヶ崎駅のほぼ中間にあり、どちらからも徒歩で出かけるには距離がある。公共バスの本数も少ない。そこで行きはタクシーで向かい、帰りは公共バスで水沢駅まで帰ることにした。
朝8時半に水沢駅からタクシーに乗る。女性の運転手で行き先を告げると、「胆沢城ですか? あそこ、何もないですよ」と。テーマパーク「歴史公園えさし藤原の郷」を勧められた。胆沢城への道すがら行きたい理由を話すと、「水沢に興味を持ってもらえてうれしいですね」と、運転手はとても上機嫌に。地元の魅力は、案外、地の人は気がつかないものかも。
20分ほどで胆沢城跡に到着。
確かに、胆沢城跡を示す石の標識と全体地図の看板、少し離れたところに奥州市埋蔵文化財調査センターがある以外は、一見ただの原っぱだ。田んぼとの境界も分からない。前日の平泉にがっかりしただけに、「何もなさ」に舞い上がってしまった。私が子供の頃の奈良・平城宮跡のようだ。
政庁の跡は小高くなっている。ただ、夏草に覆われてしまっている。
下は政庁跡から周囲を見渡した風景。
かつての「城の中」、政庁のすぐ近くには民家もある。促成栽培のハウスもあり、生活感がにじみ出ている。「これ、これ」とうれしくなった。
かつての城の中は、多くが田畑になっている。かつての大路、あやめ苑を想像しながら、農道を散歩する。
すると、はるか先にうっすらと鳥居が見えてきた。
近づくと、鎮守府八幡宮という神社であることが分かった。八幡太郎義家が活躍した「本場」の八幡宮だ。
鳥居をくぐると、玉砂利がきれいに掃き清められていた。凛とした境内。きっと付近の人々に崇敬されているに違いない。
社殿に参拝し、扁額を見上げる。華やかではないけれど、なんとも言えぬ枯淡の味わいが。
胆沢城跡の農道を20分ほど散歩して、奥州市埋蔵文化財調査センターへ向かった。
付近では発掘作業をする人々がいるものの、月曜は休館日だった。残念無念。アテルイ関連の展示物を見るのを楽しみにしていたのだが、仕方がない。
県道沿いのバス停「八幡」へ。水沢駅方面に向かうバスは10時すぎにここを通る。1ペットボトルのお茶を飲みつつ、10分ほどバスを待った。
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