岩手旅行- 遠野のカッパ淵、夜中と昼間に2度訪れてみた

2023年4月15日

遠野といえば河童である。「カリンちゃんとくるりんちゃん」という遠野のキャラクターにもなっている。『遠野物語』でも河童は幾度も登場する。

柳田国男『遠野物語』より「河童」全文(探検コム)

日本人にとって、ツチノコと同じく架空の生き物とは分かっていながら、存在を信じたい思いに駆られる生き物じゃないだろうか。

カッパが多く住むといわれるカッパ淵に、昼と夜、二度訪れた。遠野随一の観光スポットだ。

カッパ淵へは常堅寺の境内を通ってアクセスする。遠野伝承園近くの駐車場に車を駐めて、田んぼ道を歩いて10分ほどで常堅寺に到着。曹洞宗の禅寺で、1490年(延徳2年)に開山した古刹。左右に仁王像を配した立派な山門だ。

境内に入ると、珍しいカッパの狛犬がいる。こんな伝説が添えられていた。「馬を川に引きこむいたずらに失敗したカッパは、おわびをして許され、母と子の守り神になりました。常堅寺の火事のさいは頭の皿から水を吹き出して消しとめ、いまでも一対のカッパ狛犬として境内にその姿をとどめています。」

常堅寺境内を抜けるとカッパ淵に到着。

うーむ、何のことはない、木々に囲まれた川の淵だった。カッパの神を祀った小さな祠にはキュウリが備えられてはいるが。

誰もいなければ、それなりに風情はあるのだろうが、遠野随一の観光スポット、観光客が闊歩してにぎやか。先っぽにキュウリを結わえたカッパ捕獲用の竿まで常備してある。これでは、たとえカッパが実在したとしても、ビクビクして出てこられないだろう。

実は、前日の夜9時すぎにカッパ淵を訪れた。どうしても、夜の遠野の空気を吸ってみたかったから。夜間は常堅寺が閉門しており、境内を通り抜けることができない。なので、田んぼのあぜ道を遠回りして、常堅寺の墓地の脇を抜けてアクセスしなければならない。これが大変だった。

周囲に街灯はない。真っ暗闇。懐中電灯を持ってこなかったので、幸い登山用に小さな懐中電灯を持参していた。あぜ道を照らしながら迷わぬように進んだ。下が夜の田んぼ道。

カッパ淵に到着して懐中電灯の光を消す。しばらくすると徐々に目が暗闇に慣れてくる。すると、川のせせらぎが耳に入る。目ではなく耳で、夜の風景を感じるような。どこかでカッパが、こちらの気配をうかがっているような。10数分滞在した気もするし、3分ほどしか経っていない気もするし、不思議な時間を過ごした。苦労して出かけただけのことはあった。

ところで、カッパ淵のすぐそばには、古いお稲荷様のお堂がある。

二つの鳥居が並んでおり、手前が傾いたままになっている。だが、この傾きが不思議なバランスを感じ、しばらく見とれてしまった。お稲荷様というと、鮮やかな朱色に塗られた鳥居が持ち味。ここの土着的な趣に強く惹きつけられた。遠野の思い出に残る光景だった。「卯子酉様」と共に大好きな場所となった。


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