多賀城跡、奈良時代・大和朝廷の北方拠点へ
岩手旅行最終日。2013年は八戸から、2014年は鶴岡から一日で大宮まで在来線で帰った。最終日に終日、鉄道ばかりの移動は疲れたので、今回、三度目の東北旅行は最終日、仙台に宿泊した。仙台から大宮までは5時間半程度、半日で首都圏に帰ることができる。
で、最終日は午前中、仙台近郊にある多賀城と東北歴史博物館を訪問し、午後、首都圏に帰ることにした。これは大正解。前の2度の東北旅行最終日に比べると、はるかに楽だった。
まず、多賀城へ。多賀城は、724年(神亀元年)に大野東人(おおの・あずまひと)によって創建され、陸奥国府と鎮守府が置かれた大和朝廷の拠点。奈良時代、平城京を中心に北に多賀城、西に太宰府、3つの拠点で律令国家は成り立っていた。
東北本線の国府多賀城駅を下りると激しい雨。今回の旅は本当に天候に恵まれなかった。駅を出てすぐ、多賀城の遺跡の発掘現場に出くわす。
発掘現場だけに道は舗装されていない。土の細い道の上にビニールシートをかぶせた、にわか作りの遊歩道だ。ゆるい下りの坂道で大きくすっ転んでしまった。土砂降りの土の道。ジーンズが泥だらけになってしまった。お尻まで水が染みた。周囲に着替えできそうなところがない。ここは意を決して、濡れたまま多賀城跡を回ることにした。
多賀城跡は多賀城駅からすぐのところにある。ところが史跡公園は広大だ。8月の土曜だが、さすがに大雨の中、見学する旅行者は誰もいなかった。政庁跡を目指してトボトボと歩いた。
しばらく歩くと、木造りお堂が見えた。多賀城碑の覆屋だ。この石碑は高さ約2メートル、幅約1メートル、厚さ約50センチ。たくさんの字が並んでいるが、離れた距離からはてっぺんの「西」の字しか、読むことはできなかった。
Wikipediaには下のように解説されている。
碑に記された建立年月日は、天平宝字6年(762年)12月1日で、多賀城の修築記念に建立されたと考えられる。内容は、都(平城京)、常陸国、下野国、靺鞨国、蝦夷国から多賀城までの行程を記す前段部分と、多賀城が大野東人によって神亀元年(724年)に設置され、恵美朝狩(朝獦)によって修築されたと記す後段部分に大きく分かれる。
西
多賀城
去京一千五百里
去蝦夷國界一百廿里
去常陸國界四百十二里
去下野國界二百七十四里
去靺鞨國界三千里
此城神龜元年歳次甲子按察使兼鎭守將
軍從四位上勳四等大野朝臣東人之所置
也天平寶字六年歳次壬寅參議東海東山
節度使從四位上仁部省卿兼按察使鎭守
將軍藤原惠美朝臣朝獦修造也
天平寶字六年十二月一日
都から1500里。当時の人々にとっては、遠い遠い異国への入り口であったに違いない。
多賀城碑から片側が畑の市道を歩くと、やがて政庁への幅の広い階段が見えた。
ゆるい坂道だが夏草に覆われており、またも滑りやすい。片手で傘をさしているので歩行が今ひとつ不安定。二度と転倒しないよう注意しつつ、坂をゆっくりと上った。
坂を上りきると前方に政庁跡が見えた。同時代の史跡のためか、雰囲気は平城宮跡に似ている。
政庁の周囲には、官衙と寺院が設置・整備された。ただ、多賀城は伊治公砦麻呂の反乱で消失したり、869年の貞観地震で倒壊したりし、何度か造営、復興されている。多賀城を一つのイメージで捉えるのはよくないと思った。
そんな想いを巡らしながらゆっくりと公園内を散歩したかったが、雨脚が強くなり、早々に立ち去ることにした。
政庁から多賀城駅方面を見ると、東北本線の高架が見えた。
この近くにある松島湾・塩竃湊国府津は、さまざまな歌枕があるが、かつてはこの先に海が見えたのだろうか。
「きみをおきて あだし心を わが持たば 末の松山 浪もこえなむ」-古今和歌集 詠み人知らず
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