隅田川、堤防が隔てるもの
隅田川の堤防の裏側に、開発から取り残された小さな緩衝地帯を見つけた。この小さな緩衝地帯は雑草が萌える砂利道で、何となく昭和の面影を感じる。川がゆるやかにカーブしているので、碁盤の目のように区画整理ができなかったためだろうか。
一方、堤防の表側(川側)は遊歩道としてきれいに整備されていて、目の前にはバブル期に開発された佃島の高層マンションがそびえ立っている。堤防の上に立つと、堤防は映画『20世紀少年-最終章』で見た、新旧の東京を隔てる壁のように思えた。
遊歩道には、一か所だけ小さな岸壁があって、油の小さな輸送船が繋留されていた。なぜここにあるのか、何のための輸送船なのかはわからない。人工的に小ぎれいだけど、まったくもって無機的な風景を描いた水彩画に、体温を持つ血を、一滴垂らしたような残酷な風景だった。