『聞き書 埼玉の食事』を参考に地元の正月雑煮を作る
埼玉県産の食材(お餅を除く)とレシピにこだわって、正月雑煮を作ってみました。
私は大阪出身なのでトラディショナルな埼玉・川越の家庭料理を知りません。そこで、農文館発行の「日本の食生活全集(全50巻)」の中の1冊、『聞き書 埼玉の食事』を参考にしました。
この1990年代初頭に刊行された「日本の食生活全集」(1992年刊行)は本当に素晴らしいシリーズです。大正〜昭和の庶民の一年の食生活を、当時、70〜80代の主婦に「聞き書き」してまとめたもの。全国300地点、聞いた人は5000人。収録料理数5万2000点! 都道府県別に網羅した48巻と索引2巻からなる家庭料理のデータベースです。
下は、この全集の刊行に向けた意気込み。
今、やっておかなければならないことがある。今、やっておかなければ、永久に失われてしまうことがある。日本人がつくり上げた食事。それは、今、それを記録しておかなければ、永久に失われてしまう。
「日本の食生活全集」刊行によせて
建築物・構造物・書画・骨董・民具等、形あるものは残る。しかし、日本人の伝統的食事の総体は、それをつくった人々がいなくなれば永久に失われる。
大正から昭和初期にかけて、食事をつくった人人、今、80歳前後の主婦達は、日本の食事を伝承した最後の人々であろう。この人々が、この世から去れば、その人々とともに日本の食事は永久に失われてしまう。(以下略)
この全集の埼玉県巻が『聞き書 埼玉の食事』です。
埼玉県といっても、西側の山岳地帯と中部の入間台地、東側の平野では暮らしも文化もまったく違うもの。埼玉県の食をひと括りにせず「秩父山地」「大里・児玉」「入間台地」「北足立台地」」「東部低地」「川越商家」「川口の鋳物工場の共同給食」等、風土と共に食文化を解説しています。
昨年末、JAいるま野の直販店で、里芋、にんじん、カブ、こまつな等の食材を買ったので、入間台地の正月雑煮を作ってみることに。『聞き書 埼玉の食事』にはこのように書かれています。
正月の三が日は、男衆が台所に立つ。前日女衆が準備しておいた材料を使って雑煮を作る。里芋、大根、にんじん、ごぼう、こまつなを煮て、醤油で味をつけ、焼いたきりもちを入れる。さっぱりしたいも雑煮は、おそとで祝ったあと食べる。
『聞き書 埼玉の食事』より
ダシは鶏むね肉とこいくち醤油。
大阪生まれの私は、幼い頃から白味噌の雑煮を食べて育ちました。ですが、こってりとした白味噌よりも、醤油味の入間台地の雑煮の方がさっぱりとした味わいで食べやすいです。
『聞き書 埼玉の食事』は3,000円以上と少々値段が高いですが、小学生の夏休み・冬休みの自由研究の参考書籍に力を発揮しそうな一冊です。