湿地の生態系が残る「三ツ又沼ビオトープ」、早春の散歩
「ビオトープ」とは?
「ビオトープ」とはドイツ語で「地域の野生生物が生息する場所=生態系」のこと。日本では1990年代からこの言葉を目にするようになりました。
開発によって人工的に改変された川・水路・ため池などを自然に近い形に戻し、多様な自然の生物が生息できる環境=生態系を再生させようという動きが活発になる中、ビオトープの名を持つ場所が徐々に増加。
三ツ又沼ビオトープも、地元の住民や環境保護団体の働きかけで、国が三ツ又沼周辺の土地を買い取り、整備することで、2001年春に生まれたのです。
「三ツ沼」ができたきっかけ
三ツ又沼。住所は上尾市ですが、川越市、上尾市、川島町の境界にあります。荒川と入間川に挟まれるような場所です。現在は数キロ南にある国道16号線・上江橋付近で荒川と入間川は合流しますが、かつてはこの付近で2つの大河が合流、文字通り「三ツ又」になっていました。
当然ながら、この付近の住民は両河川の氾濫、洪水にしばしば悩まされていました。そこで1932年ごろから合流点を現在の上江橋付近に付け替える工事が行われ、結果、当時の合流点の痕跡として三ツ又沼が残ったのです。
三ツ又沼の生い立ち
三ツ沼ビオトープの案内板より
荒川は、江戸時代から、大雨の後の洪水のときに流れる水の幅を広く確保するために、流れから離れた場所に堤が築かれました。
このあたりの荒川は、左岸にある上尾市側は大宮台地という高い場所があり、右岸側の川越市や川島町の側は平地が広がっています。そのため、右岸側の農地を幅広く含んで、堤はつくられたのです。それでも、もとは荒川と入間川の合流点だったこの三ツ又沼のあたりは、荒川の流れが大きく蛇行していたので、洪水を何度も起こした場所でした。
そこで荒川の流れをまっすぐにする工事や、入間川と荒川の間に新しい堰をつくって、合流点を下流側に移動する工事が行われました。
右岸側に河川敷が幅広く広がるこのあたりから上流側には、荒川のこうした工事の後も、昔の流路や地形を、河川敷の中にかなり色濃く残すことができました。三ツ又沼付近は、現在も、昔の流れや形がよく残り、湿地や、沼、斜面林など、多彩な自然が幅広く残っていて、たくさんの野生生物と私たちとの、貴重な出会いの場になっています。
長大な木道がある湿地を散歩
三ツ又沼ビオトープは大きく2つのエリアに分かれています。三ツ沼の南側にある湿地エリアと、北側の雑木林の回廊エリアです。
湿地エリアは数百メートルにわたる長大な木道が整備されています。今回、早春に訪問したので、湿地エリアは乾燥して水はなく、草原の上に木道が架けられたような雰囲気。もともとは荒川・入間川の合流地点だったものの、川から分断されてしまったので徐々に乾燥化が進み、植生が変わりつつあるそうです。
湿地エリアの一部にはクヌギやムクノキが植えられていて、林を育てているとのこと。
湿地エリアを南に抜けるとゴルフ場があり、突然風景が一変します。ちょっとびっくり。ゴルフを楽しむ人とビオトープを散策する人では、自然の接し方、世界の見え方が違っているような気がしました。
一方、三ツ又沼の北側の雑木林のエリアは、小川に沿って素敵な散歩道が続いています。過湿地で森林を成す数少ない樹木・ハンノキが見られます。
ちょうど菜の花が咲き始めたばかり。北に抜けると水田があり、懐かしい「里の原風景」が広がっていました。
三ツ又沼ビオトープ、鳥類ではオオタカが現れるとのこと。オオタカは私が子供の頃、絶滅の恐れのある鳥でしたが、鳥類保護施策により数が急速に回復。2017年には「希少野生動植物」が解除されました。
双眼鏡を片手に、オオタカの勇姿をぜひ見てみたいです。
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