人気ダイビングスポット「ナズマド」に迷い込む – 八丈島旅行(6)
9月下旬、八丈島に滞在している旅行者は、圧倒的にダイビング目的の人が多かった。ダイビングをやる人は空港でもホテルでも荷物のサイズが一回り大きく、服装や髪型がいかにも「マリンスポーツをやっている感」があり、すぐに分かる。
私と同じ中高年でも山好きと好きでは、雰囲気が違っている。特に女性。ダイビングスーツの前をはだけ、ビキニの胸を平気で出したりしていると、ドギマギする。山で肌を露出する女性はめったにいない(当然ですね)。
さて、今回の旅、登山が目的だったので、八丈島の登山スポットに関する情報は出発前に予習しておいた。登山ルート、登山口へのアクセス等、地理の予備知識を持ってでかけた。
ところが、八丈島は登山よりもダイビングで知られる島であるにも関わらず、マリンスポーツには興味がないのでまったく予備知識をもっていなかった。
そんな中、滞在3日目、スクーターで島の北側を走っていると「ナズマド」という変わった地名の行き先案内が目に入った。カタカナの地名が気になり、道路から外れて海側へ下りてみた。
海側に下りると小さな漁港のようなスロープがあり、手前には車が10台ほどとまっていて、黒いダイビングスーツを来た人たちがかなり多くほどたむろしている。50人近くいるのでは。
コロナ禍の影響で、八丈島の観光スポットはほとんど人がいなかったが、ここは別世界だ。
全員がダイビングスーツを来て重そうなタンクを背負う中、私ひとり軽装でいると、民族衣装を来た少数民族の村に迷い込んだ旅行者のような気分になる。
実は、ここナズマドは八丈島では一番有名なダイビングスポットであることを、ホテルに帰ってから知った。
ダイバーたちはいずれもグループで、海に続くスロープを、一本のロープを握りながら後ろ向きに海の中に入っていく。その姿は巡礼者のパーティーのように見える。やがて一人二人と順々に海の中に消えていった。
ここは登山でいうと有名な山の登山口なのか。登山好きは上へ上へと志向し、ダイビング好きは下へ下へと志向する。当たり前のことを、改めて感心した。
20年以上前に、一度、フィリピンで体験ダイビングに参加してことがあった。1時間ほどの“体験”が終わったら、ヘトヘトになったことだけ強く覚えている。あと海の中は水の流れが速く、両手に岩を強く握りしめたことも。
以来、ダイビングをやる人たちを間近でじっくり眺めるのは初めてだ。とにかく興味深い。文化人類学者のような目でダイバーたちを見てしまった。
ところで「登山もダイビングも好き」という人はいるのだろうか? 私の周囲にはいない。登山好きとダイビング好き、2つの種族の間には、生態上、習性上の大きな差異がありそうな気がする。
【2021年 八丈島旅行の記録】
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人気ダイビングスポット「ナズマド」に迷い込む
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