中国、大運河の北端・通州へ日帰り旅行
歴史上、世界最大級の公共事業は中国の大運河ではないでしょうか。
北京と杭州を結ぶ総延長2500キロメートルの運河で、隋の時代、西暦610年に完成。壮大なビジュアルゆえ、日本人は万里の長城に目が行きがちですが、経済的な波及効果でいうと、大運河は長城に勝る一大事業だと思っています。長城が国防の盾となり、大運河が華北と江南を結ぶ流通の大動脈となることで、中国は機能していたと言えます。
ところで、大運河の南端・杭州は美しい古都として知名度が高く、今も中国人が住みたいナンバーワンの都市。一方、明・清朝時代の北端・通州は、現在では大運河の要衝であったことすら忘れ去られた街になっています。
規模があまりにも違いますが、江戸時代、都と上方を結んだ淀川の水運に例えると、通州は伏見にあたる海運の拠点でした。
さて、先週、久しぶりに中国を訪問。以前から気になっていた通州に出かけてみました。現在、通州は北京市通州区という行政単位になっています。東京でいうと東側の足立区、葛飾区のようなイメージです。
2003年に地下鉄八通線が開通。「地下鉄(実際は高架鉄道)」がぐんと東に伸びて、朝陽区のオフィス街と結ばれたため、近年、北京のホワイトカラーのベッドタウンとして急速に発展しています。実際、八通線の車窓から眺める景色は、古都北京のイメージからは程遠い、近年建設された高層マンションばかりです(写真は通州区内にある八通線の梨園駅)。
八通線の梨園駅からタクシーに乗ってまずは通州の博物館へ。タクシーの運転手は開口一番「博物館に行く客なんて、十年ほど、運転しているけど初めてだよ」と。少しは運河の集積地の光景が残っているものかと期待したのですが、大都市郊外のどこにでもある街の風情でした(写真は梨園駅付近)。
博物館は唯一残った四合院風の古い木造の建物。入場料は5元。北京市内の有名観光地の入場料が25元ほどするのに比べると、良心的な価格設定です。ただし、三つある展示室の二つは閉まっていたので、破格の安さではないですね。
1980年代の中国の博物館の雰囲気が残る薄暗い展示室は、通州の古代から近代を時代に沿って解説。清朝末の積荷の集積風景の写真や当時の碇など、なかなか興味深い展示でした。
その後、趣ある町並みを探して旧市街を散歩。一昔前の北京市内の胡同のような町並みが残っておりました。面白かったのは、通りの家の壁が濃いピンク色で塗られている点。ちょっと不思議な雰囲気です。この壁を少し削ると、文革時代の標語がいっぱい現れそう。
小さな路地をあてなくブラブラ。運河の面影は見られませんでしたが、冬の華北特有のリンとした空気が気持ちのいい、午後の散歩タイムでした。
通州への行き方
天安門からだと、東西に伸びる地下鉄一号線で四恵駅まで行き、四恵駅で八通線に乗り換えて通州北苑駅で下車。天安門からここまで50分程度。通州北苑駅からバスかタクシーで通州中心街まで15分程度。
ディスカッション
コメント一覧
まだ、コメントがありません