新刊『僕たちの大好きな遊園地』が発売
久しぶりに出版物に関わりました。新刊のお知らせです。
僕たちの大好きな遊園地(洋泉社MOOK)
定価/1260円 発行/洋泉社
アルバムを開けばいまも思い出す、懐かしいあの遊園地へ、もう一度。向ヶ丘遊園、二子玉川園、東京マリン、宝塚ファミリーランド、甲子園阪神パーク‥‥、昭和の思い出を追う「社会派」遊園地ガイドです。
この本に関わるきっかけになったのは、昨年の秋、版元である洋泉社の編集者が、以前に書いた記事「近鉄あやめ池遊園地の閉園で思うこと」を読んで、メールいただいたことからでした。
東京ディズニーリゾートやユニバーサルスタジオジャパン等、大型テーマパークに押されて閉園が進む遊園地。過去に光を当てた本作りに、協力いただきたい、と。特に、1960~70年代の関西の遊園地事情に強いライターがいないので、お願いしたい、ということでした。
企画書をいただき、「昭和に子供時代をすごしたミドルエイジ」というターゲット層に沿った、遊園地のラインナップと解説ポイントをまとめて、一ヶ月後、二本ほどサンプル原稿を書いて送ったところ、西日本のページをすべて執筆してほしい、という依頼がありました。
「正月休みにまとめて書くけど、4000~5000字程度必要な遊園地もあり、すべてを書くのは厳しい」とお返事をして、大阪の編集者時代、競合媒体だった「ぴあ関西版」元編集長を紹介。宝塚ファミリーランド、近鉄あやめ池遊園地等、すでに閉園した遊園地のみ、私が執筆する運びとなりました。
なので、今年の年末年始は、田舎のネットカフェに入り浸って、ノートパソコンで原稿執筆にいそしみました。しかし、4000字クラスの原稿なんて本当に久しぶり。「書く」基礎体力がすっかり落ちてしまった事実に愕然としました。結局、年末年始では書き終えることができず、成人の日の三連休もつぶしてようやく仕上げた次第です。
今回、私が執筆したのは下の10遊園地。
- 宝塚ファミリーランド
- 近鉄あやめ池遊園地
- 甲子園阪神パーク
- 奈良ドリームランド
- 近鉄玉手山遊園地
- さやま遊園
- 比叡山頂遊園地
- 八瀬遊園
- びわ湖タワー
- 伏見桃山城キャッスルランド
この本は、遊園地の施設紹介よりも、遊園地を通して見える「昭和」の世相や、家族のライフスタイルにフォーカスしています。
例えば、甲子園阪神パークのページ。阪神パークは、ヒョウとライオンの混血児「レオポン」の飼育で知られていましたが、当時、トラとライオンの混血児「タイゴン」や「ライガー」等、世界中の動物園が、異種交配の新しい猛獣を生み出す競争をしていたこと。
玉手山遊園地のページでは、家族の休日のレジャースタイルが、子ども会(=地域単位)からマイカーでお出かけ(=家族単位)に変容し、子ども会のハイキングでにおいて、柏原名産のブドウ狩の「お弁当を広げる場所」としての役割が、1980年代には必要なくなったこと等です。
そのほか、あやめ池遊園地では、第二次大戦中、時局に対応した大型の軍事宣伝イベントが開催され、実物の爆撃機や巨大な戦場ジオラマが園内に創出されたこと。敗戦後、わずか数年の後に、同じ場所でGHQ主導のアメリカ文化を啓蒙する大イベントが開催されたこと。激動の時代に翻弄された遊園地の姿を、当時の写真とともに解説しています。
読み物は40代の研究者が執筆。
中でも、原武史明治学院大教授による「遊園地という思想~堤康次郎と正力松太郎」が面白いです。読売グループと西武グループ、二人の総帥が、最晩年、よみうりランドと西武園、大型遊園地プロジェクトで何を考え、何を目指したのか? 非常に興味深いコラムとなってます。
一見、一昔前の遊園地ガイド風の装丁ですが、最盛期の「別冊宝島」を彷彿させる“濃い”内容です。ぜひ、本屋でお買い求めくださいませ。
ディスカッション
コメント一覧
ムック買いました。
これを読んでいると、月刊情報誌の年に一度の目玉企画が遊園地特集で、チケットプレゼントだった時代を懐かしく思い出しました。
個人的には、もっと奈良ドリームランドについて読みたかった(個人的に日本ドリーム観光という会社に興味アリ)のと、リアルタイムでなくなってしまったエキスポランドが落ちているのが残念。
でも、本当に読み応えがあって面白かったです!!
zunismさん、こんにちは。どうも買っていただいてありがとうございます。15年前のエルマガを、段ボール箱から引っ張り出して書きました。昔、入園券の抽選&プレゼント発送、大変でしたね!